『それでも未来は変わらない』
2006年10月19日 ショート・ショート コメント (2) 様々な分かれ道に迷いながら、少女はその先にある行き止まりの部屋にたどり着いた。
「ここは……どこですか? どうやら道に迷ってしまったみたいで」
「あなたはどこへ行こうとしていたの?」
「それも……分からないんです」
「ここは現世に戻るか、浄化されるか、消滅してしまうかを決める場。魂の行き着く最終地点のひとつ」
「たましい?」
「そう。あなた、自分が死んでいることには気がついている?」
「はい。確かトラックに轢かれて……」
そこまで言うと、少女は口を押さえてしゃがみこんでしまった。
「ごめんなさい。思い出させてしまって。たまにいるの。自分が死んでいることに気がついていない人間が」
「い、いえ。大丈夫です」
少女はそのまま座り込んでしまった。
「本当に大丈夫か?」
今まで気がつかなかったのか、少女は体をビクッとさせた。
「ごめん、ごめん。驚かせてしまったかな」
40代くらいの男性が彼女と向かい合う形で座っていた。
「あなたは?」
「俺もだいぶ前からここにいてね」
「こちらは現世で言うと、すでに2年も悩んでおられるの」
「2年!?」
そう言うと彼女はすぐに申し訳なさそうな顔をした。
「す、すいません」
「ああ、いいんだ。ここに来るモノは皆、驚くからね。もう慣れてしまったよ」
そう言うと、男性は笑った。
「あの……どうして2年も?」
「私の場合は少し特別でね。仮に現世に戻っても、すぐに死んでしまうのだよ」
「どうしてそんなことが?」
「ここでは現世におりてからの1年をダイジェストに見ることができるの」
今まで黙っていた妖艶な女性が口を開いた。
「普通は赤ん坊のころは、かわいがられるんだけれど、彼の場合は生まれてすぐに死んでしまう、というより、殺されてしまうのよ」
「え!?」
「しかも、その加害者が母親なのよね」
「そんな……」
「そしてここからが問題なのだが」
今度は男性が話し始めた。
「次に死んだら、俺の魂は確実に消滅してしまうんだ」
「使い切った魂は浄化ではなく、消滅の道をたどる」
女性が持っている扇子で扉のひとつを指した。
「だからこの際、浄化の道を選ぼうか、悩んでいてね。でも死ぬ前に約束した女房との約束もある」
「皮肉にも、彼の奥さんは今後30年は健在ね」
「妻には長生きしてもらいたいから、それは良いんだ」
そうは言いながらも、どこか男性はさびしげだ。
「現世に戻りたいですか?」
「ああ、だが……」
「私の1年も見せてください」
「いいでしょう。こちらの部屋へ」
そういうと、2人は4つ目の部屋に入っていった。
ほんの2、3分だろうか。2人が出てきた。
「……」
少女の顔は暗かった。
「どうだったんだね」
「私も虐待を受けていました」
「本当か!?」
男性が思わず声を上げた。
「ここでは嘘をつけないわ。彼女が言っていることは本当よ」
「そうか……」
沈黙が訪れた。
「決めました。私、現世に戻ります!」
少女が沈黙を破るように言った。
「虐待を受けると分かっているのにか?」
「ええ。確かに酷い目に遭うかもしれません。でも、私は運命を変えてみせます」
「分かっているのか。お前は赤ん坊に戻るんだぞ。赤ん坊のお前にいったい何ができるというんだ!」
先ほどまで落ち着いていた男性からは想像できないほど取り乱していた。
「それでも、ここでウジウジしているよりはマシです!」
「それでいいのね?」
「はい」
「それならこの扉をお開けなさい」
そういわれて少女は扉を開けた。
「今までのモノの中には、俺に見向きもしないのまでいた。なのにどうして、そんなに俺のこと……」
「なんだか他人には思えなくて」
「それだけか?」
「でも、大事なことだと思います」
「そうか」
「待ってますからね」
そう言うと、少女は扉の向こうへと入っていった。
現世では20年が過ぎた。
「続いてのニュースです。本日、河川敷で生後間もない赤ちゃんの遺体が発見されました。その近くにはその母親と見られる女性の遺体も……」
ニュースではいつもと変わらない内容をアナウンサーが無感情に報じていた。
「皮肉なものね。あのときの少女が男性の母親になるなんてね」
そう言うと、女性はため息をついた。
「運命は平等よ。人にも魂にも。その運命を変えることなんて、この世でもあの世でも出来はしないのに」
そのように一人つぶやくと、部屋に二十歳くらいの女性が入ってきた。
「ここは…どこですか? どうやら道に迷ってしまったみたいで」
---------------------------------------------
後記です。
結局、夜に書いている。
今回の妖艶な女性のモデルはもちろん、侑子さんです。
これはショートにする前、実は長編のホラーで、
富士見ヤングに出す予定のものでした。
それを強引にショートに書き直したものです。
初めは少女が死ぬところからでしたが、
さすがにそこまで書いているとショートで収まらないので。
オチがイマイチでしたか。そうですか。
なに、オチだけではない。全部が、ですか。すいません。
面白くないですよね・・・。駄作ですよね・・・。
最近、読んでいる皆さんに申し訳なく思えてきましたもの。
更新していいのかな、これ、みたいな感じです。
「ここは……どこですか? どうやら道に迷ってしまったみたいで」
「あなたはどこへ行こうとしていたの?」
「それも……分からないんです」
「ここは現世に戻るか、浄化されるか、消滅してしまうかを決める場。魂の行き着く最終地点のひとつ」
「たましい?」
「そう。あなた、自分が死んでいることには気がついている?」
「はい。確かトラックに轢かれて……」
そこまで言うと、少女は口を押さえてしゃがみこんでしまった。
「ごめんなさい。思い出させてしまって。たまにいるの。自分が死んでいることに気がついていない人間が」
「い、いえ。大丈夫です」
少女はそのまま座り込んでしまった。
「本当に大丈夫か?」
今まで気がつかなかったのか、少女は体をビクッとさせた。
「ごめん、ごめん。驚かせてしまったかな」
40代くらいの男性が彼女と向かい合う形で座っていた。
「あなたは?」
「俺もだいぶ前からここにいてね」
「こちらは現世で言うと、すでに2年も悩んでおられるの」
「2年!?」
そう言うと彼女はすぐに申し訳なさそうな顔をした。
「す、すいません」
「ああ、いいんだ。ここに来るモノは皆、驚くからね。もう慣れてしまったよ」
そう言うと、男性は笑った。
「あの……どうして2年も?」
「私の場合は少し特別でね。仮に現世に戻っても、すぐに死んでしまうのだよ」
「どうしてそんなことが?」
「ここでは現世におりてからの1年をダイジェストに見ることができるの」
今まで黙っていた妖艶な女性が口を開いた。
「普通は赤ん坊のころは、かわいがられるんだけれど、彼の場合は生まれてすぐに死んでしまう、というより、殺されてしまうのよ」
「え!?」
「しかも、その加害者が母親なのよね」
「そんな……」
「そしてここからが問題なのだが」
今度は男性が話し始めた。
「次に死んだら、俺の魂は確実に消滅してしまうんだ」
「使い切った魂は浄化ではなく、消滅の道をたどる」
女性が持っている扇子で扉のひとつを指した。
「だからこの際、浄化の道を選ぼうか、悩んでいてね。でも死ぬ前に約束した女房との約束もある」
「皮肉にも、彼の奥さんは今後30年は健在ね」
「妻には長生きしてもらいたいから、それは良いんだ」
そうは言いながらも、どこか男性はさびしげだ。
「現世に戻りたいですか?」
「ああ、だが……」
「私の1年も見せてください」
「いいでしょう。こちらの部屋へ」
そういうと、2人は4つ目の部屋に入っていった。
ほんの2、3分だろうか。2人が出てきた。
「……」
少女の顔は暗かった。
「どうだったんだね」
「私も虐待を受けていました」
「本当か!?」
男性が思わず声を上げた。
「ここでは嘘をつけないわ。彼女が言っていることは本当よ」
「そうか……」
沈黙が訪れた。
「決めました。私、現世に戻ります!」
少女が沈黙を破るように言った。
「虐待を受けると分かっているのにか?」
「ええ。確かに酷い目に遭うかもしれません。でも、私は運命を変えてみせます」
「分かっているのか。お前は赤ん坊に戻るんだぞ。赤ん坊のお前にいったい何ができるというんだ!」
先ほどまで落ち着いていた男性からは想像できないほど取り乱していた。
「それでも、ここでウジウジしているよりはマシです!」
「それでいいのね?」
「はい」
「それならこの扉をお開けなさい」
そういわれて少女は扉を開けた。
「今までのモノの中には、俺に見向きもしないのまでいた。なのにどうして、そんなに俺のこと……」
「なんだか他人には思えなくて」
「それだけか?」
「でも、大事なことだと思います」
「そうか」
「待ってますからね」
そう言うと、少女は扉の向こうへと入っていった。
現世では20年が過ぎた。
「続いてのニュースです。本日、河川敷で生後間もない赤ちゃんの遺体が発見されました。その近くにはその母親と見られる女性の遺体も……」
ニュースではいつもと変わらない内容をアナウンサーが無感情に報じていた。
「皮肉なものね。あのときの少女が男性の母親になるなんてね」
そう言うと、女性はため息をついた。
「運命は平等よ。人にも魂にも。その運命を変えることなんて、この世でもあの世でも出来はしないのに」
そのように一人つぶやくと、部屋に二十歳くらいの女性が入ってきた。
「ここは…どこですか? どうやら道に迷ってしまったみたいで」
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後記です。
結局、夜に書いている。
今回の妖艶な女性のモデルはもちろん、侑子さんです。
これはショートにする前、実は長編のホラーで、
富士見ヤングに出す予定のものでした。
それを強引にショートに書き直したものです。
初めは少女が死ぬところからでしたが、
さすがにそこまで書いているとショートで収まらないので。
オチがイマイチでしたか。そうですか。
なに、オチだけではない。全部が、ですか。すいません。
面白くないですよね・・・。駄作ですよね・・・。
最近、読んでいる皆さんに申し訳なく思えてきましたもの。
更新していいのかな、これ、みたいな感じです。
コメント
ただ、ちょっと強引な感がありました。
状況と設定を飲み込むのに時間がかかったためだと思います。
侑子さんってclampの漫画のキャラでしょうか。
未読ですが興味が湧いてきました。
ですよね、強引ですよね!
特に冒頭が酷いと思うのです。
風景の設定が曖昧すぎたためだと思います。
イメージし難くなってしまったといいますか。
侑子さんは、仰られている通りCLAMP作品のXXXHOLiCに
メインで出てくる女性です。
独特な雰囲気ですが、ぜひ読んでみてください
人にお勧めできる数少ない作品です。